価値という、物語。

RESEARCH NOTE 09 / 日本の利用データ

日本のマッチングアプリ利用率は何%?「利用」「出会い」「結婚」を分母で分けて読む

「日本では何人に1人がマッチングアプリを使うのか」「結婚の4人に1人がアプリ婚なのか」という問いには、調査の種類を分けないと答えられません。利用経験、交際相手と出会った手段、結婚相手と出会った手段、利用者の交際経験は、似た言葉でも分母と質問が違います。

研究記事|公開・更新

結論:日本に一つの「マッチングアプリ利用率」を当てはめることはできません。こども家庭庁の25.1%は、15〜39歳を対象にした調査で、主に30代以下・直近5年以内に結婚した既婚者が「配偶者と出会ったきっかけ」としてアプリを挙げた割合です。IPSS第17回出生動向基本調査の20.2%は、過去5年間に結婚した初婚同士の夫婦が「ネット(SNS・ウェブサイト・アプリ等)」を出会いのきっかけに挙げた割合です。どちらも人口全体の利用率でも、アプリ利用者が結婚する確率でもありません。

ONE WORD, FOUR DENOMINATORS

「利用率」と呼ばれる数字を、まず4つに分ける

同じ「マッチングアプリの割合」でも、質問の対象が変わると答えている問いが変わります。数字を引用する前に、分子だけでなく分母と質問文を確認します。

日本のマッチングアプリ数字を分母で分ける表
数字の種類分子分母答えている問い答えていない問い
認知サービスを知っている人調査対象者全体どの程度知られているか使ったことがあるか、交際や結婚に至ったか
利用経験現在または過去に使った人対象者全体、または未婚者など誰が使ったことがあるか現在も使っているか、結果が出る確率
出会いの手段恋人・配偶者とアプリで知り合った人恋人・配偶者がいる人、または最近結婚した人その関係が始まった経路の構成全人口の利用率、利用者の成功率
利用者の結果アプリで出会った人と交際した人アプリを使ったことがある人その利用者集団で経験された結果使わない場合との因果差、全利用者の将来確率

読み方の原則:「25.1%」のような出会いの構成比を「利用者の25.1%が結婚する」と読み替えない。分母が違うため、割り算を組み替えて別の率を作ることもできません。

CHILDREN AND FAMILIES AGENCY / 2024 SURVEY

こども家庭庁の25.1%は、何の割合なのか

こども家庭庁の令和6年度「若者のライフデザインや出会いに関する意識調査」は、全国の15〜39歳の未婚・既婚男女を対象にしたWeb調査です。最終報告サマリでは、本調査は20,000人、内訳は未婚18,000人・既婚2,000人。既婚者は30代以下で、原則として直近5年以内に結婚した人を対象にしています。調査時期は2024年7月8日〜17日です。最終報告サマリ(こども家庭庁)で、対象と回収割付を確認できます。

日本の調査設計を確認する表
調査の要素確認できる内容意味
対象15〜39歳の未婚・既婚の男女、全国日本の全人口や全世代の利用率ではない
本調査の人数20,000人(未婚18,000人/既婚2,000人)既婚者は意図的に2,000人を回収した層である
25.1%の分母主に30代以下・直近5年以内に結婚した既婚者の回答最近の結婚で、配偶者との出会いのきっかけを聞いた割合
25.1%の分子「マッチングアプリ」をきっかけとして挙げた人結婚相手との出会いの経路の一つ

したがって「25.1%=日本人の4人に1人がアプリを使っている」ではありません。より正確には、「この調査で対象となった最近の結婚者が、配偶者との出会いのきっかけとしてアプリを挙げた構成比が25.1%」です。デジタル庁の公式記事も、この数字を「40歳未満の既婚者のうち4人に1人がマッチングアプリで出会って結婚」と紹介していますが、同じ記事は調査対象と質問の文脈を伴って説明しています。デジタル庁ニュースの図表と説明も併読すると、見出しだけの引用を避けられます。

別の数字も同じ調査にある:速報資料では、既婚者のマッチングアプリ利用経験57%、未婚者27%という結果も示されています。これは「使ったことがあるか」の経験率であり、25.1%の「結婚相手と出会ったきっかけ」とは別の設問です。経験率と出会いの経路を足したり、片方からもう片方を推定したりはできません。

MMD RESEARCH / 2025 LARGE SURVEY

MMD研究所の30,000人調査は、別の分母を持つ

MMD研究所の2025年調査は、スマートフォンを所有する20〜69歳の男女30,000人を対象に、2025年9月19日〜24日に実施されました。回収サンプルを人口構成比に合わせてウエイトバック集計しています。対象年齢も、既婚者の条件も、こども家庭庁調査とは異なります。調査概要と結果(MMD研究所)

恋人探しをしたことがある人

スマートフォン所有者30,000人のうち75.5%。これはアプリ利用者の割合ではなく、恋人探しの経験を聞いたスクリーニング結果です。

出会いの手段

恋人探しをした22,661人の中で、マッチングサービス・アプリは20代22.6%、30代16.8%。恋人探しの場・手段を複数回答で聞いた数字です。

利用者の交際経験

利用したサービスを覚えている2,940人のうち、アプリで出会って付き合ったことがある人は54.8%。全人口の交際成功率ではありません。

さらに、身近な人がアプリで交際したと答えた割合は23.8%、結婚したと答えた割合は20.6%でした。これは回答者自身の利用結果ではなく、友人・知人・同僚・兄弟姉妹などの周囲について聞いた設問です。社会で話題になり、周囲に事例があることと、回答者自身が使うことを同じ率にしないことが重要です。

MYRI / 2026 JAPAN SURVEY

年代別の「出会いのきっかけ」は、利用率ではない

明治安田総合研究所の2026年「恋愛・結婚に関するアンケート調査」は、全国の18〜54歳8,872人(既婚3,909人、未婚4,963人)を対象に、2025年12月12〜21日に実施されたWeb調査です。「恋人や結婚相手となる可能性がある人と、どのように出会うことが多いか」を複数回答で尋ねています。

25〜29歳は33.3%

この年齢層で「マッチングアプリ」を出会いのきっかけとして挙げた割合です。全員が現在利用している割合でも、アプリ経由で交際・結婚した割合でもありません。

30〜34歳は30.9%

25〜29歳と同じ複数回答の設問で、30〜34歳では30.9%でした。年齢層ごとの出会い方の構成を示す数字で、年齢から個人の結果を予測する数字ではありません。

全体は19.7%

8,872人全体では19.7%。知人紹介40.8%、職場36.6%など他の経路と同じ回答者が複数の経路を選べるため、合計を100%にする割合ではありません。

分母と設問の境界:この調査の「出会い」は、現在の利用経験や最近の結婚相手との実際の経路だけを測ったものではありません。こども家庭庁の25.1%、MMDの恋人探しの手段、後述するJODAの利用者内の対面経験とは、対象者・質問・複数回答の条件が違います。明治安田総合研究所の公式報告書で設問と年齢別分母を確認できます。

JODA / 2026 RECENT USERS

直近利用者の「会う・交際・結婚」は、条件付きの経路

一般社団法人日本マッチングアプリ機構(JODA)の2026年調査は、2026年8月10〜18日に、直近1年間にマッチングアプリを使った18〜49歳(高校生を除く)500人をFreeasyで調べたインターネット調査です。利用者を母集団にした、オンライン接触から対面・関係進展までの条件付きデータとして読みます。

1人以上に会った経験は81.4%

500人のうち407人が、アプリで知り合った相手と1人以上会ったと回答しました。日本の全利用者の対面率や、利用していない人との差ではありません。

会った人の74.4%は2週間以内

実際に会った407人を分母に、知り合ってから初対面までの期間を尋ねた結果です。500人全体の74.4%ではなく、対面経験者内の条件付き割合です。

交際27.8%・結婚13.0%

会った407人の複数回答で、「交際した」27.8%、「結婚した」13.0%でした。調査主体が業界団体であること、自己申告・非確率サンプルであることも含めて読む必要があります。

成功率へ変換しない:この調査は利用者内の経験を記述したもので、全利用者の交際・結婚確率、アプリを使わない場合との差、サービスの優劣を推定する設計ではありません。交際・結婚・身体の関係は複数回答で、同じ人が複数の進展を選べます。調査の全表(日本マッチングアプリ機構)で各分母を確認できます。

GOVERNMENT BASELINE / IPSS 17TH NATIONAL FERTILITY SURVEY

国レベルの基準線:結婚意向と出会いの構造(IPSS第17回出生動向基本調査)

アプリ統計を評価するための最新の国レベルの基準線として、国立社会保障・人口問題研究所(IPSS)の第17回出生動向基本調査(2025年6月実施・2026年9月11日公表)があります。全国1,000調査区から無作為に選ばれた18歳以上55歳未満の独身者と、妻が55歳未満の夫婦を対象にし、独身者調査は配布15,811票・有効6,756票(有効回収率42.7%)、夫婦調査は配布10,489票・有効5,024票(47.9%)です。詳細はIPSS公式結果と掲載グラフデータ(図表5-2・5-3)で確認できます。

18〜34歳の結婚意向

「いずれ結婚するつもり」は男性75.1%(前回81.4%)、女性77.8%(前回84.3%)へ低下しました。意向は行動ではなく、時点ごとの自己申告です。

交際相手の有無と希望

恋人がいる未婚者は男性19.6%、女性27.8%。未婚者の3人に1人は交際を望まないと回答しました。交際状況・希望はアプリ利用率や個人の将来予測ではありません。

ネット経由の出会い

概要版図表5-3の対象(過去5年間に結婚した初婚どうし、妻は結婚時50歳未満かつ調査時55歳未満、客体数570)では、「(1〜9以外で)ネット(インターネット)で」(SNS・ウェブサイト・アプリ等を含む)が出会いのきっかけの20.2%(前回11.0%)でした。アプリ単独の利用率や成婚率ではありません。

境界:政府確率調査ですが、2025年6月時点の横断データで、意向・交際状況・出会いのきっかけは自己申告です。20.2%は概要版図表5-3の客体数570を分母とする、過去5年間に結婚した初婚どうしの夫婦(妻は結婚時50歳未満かつ調査時55歳未満)の構成比です。「ネット」は設問の「(1〜9以外で)ネット(インターネット)で」で、SNS・ウェブサイト・アプリ等によるやりとりを含みます。婚姻年次2020〜2024年の図表5-2の別集計18.6%や、前回の第16回調査の値と混ぜず、現在のアプリ利用率・利用者の成婚率・アプリの因果効果へ変換しません。

CARF-F-609 / JAPAN RELATIONSHIP TRANSITIONS

利用率とは別に、交際と結婚の「遷移」を見る

「アプリを使ったか」と「関係が始まったか」は別の問いです。東京大学のCARF Working Paper F-609は、2023年時点で25〜45歳の日本在住者10,000人に過去の交際・結婚履歴を尋ね、独身、交際中、結婚という状態の間を人がどう移ったかを月次データに組み立てました。本文はWorking Paper(未査読の草稿)として公開されています。研究ページと公式PDFで、調査設計と限界を確認できます。

CARF-F-609の調査設計と解釈範囲
確認する層この研究の内容読める範囲
対象と質問25〜45歳(2023年時点)10,000人。過去の交際相手、開始時期、継続・別れ・結婚の履歴を回顧的に回答。日本の特定コホートで、関係状態の変化を時系列に近い形で整理する。
主な分析25〜29歳、30〜34歳について、年次の遷移確率を中心に、2020年以降がコロナ前のトレンドからどう外れたかを比較。単身から交際、交際中から結婚という関係形成の段階を分けて見る。
主な結果両年齢群で、単身から交際への遷移は2020年以降に事前トレンドを下回り、交際中から結婚への遷移は上向く局面が観察された。前者の流量が大きく、結婚数の減少を押し下げる方向が強かった。パンデミック期の社会的接触と関係形成の変化を考える材料になる。

アプリの利用率や効果ではない:この調査はアプリ利用の有無・サービス別成果・非利用者との比較を測っていません。したがって、ここでの遷移を「アプリが結婚を増減させた」と読み替えたり、現在の日本全体の交際確率に変換したりはできません。回顧による記憶の誤差、2023年時点の25〜45歳コホート、初婚までを中心に尋ねた設計、未査読のWorking Paperという限界も残ります。

COMPARE THE UNIT, NOT THE HEADLINE

25.1%、20.2%、22.6%、54.8%は矛盾していない

数字が違うのは、どれかが間違っているからとは限りません。対象年齢、関係の段階、回答の複数選択、過去経験の記憶がそれぞれ違うからです。

利用・出会い・結婚の数字を安全に言い換える表
数値誰の中の割合か測定しているもの安全な言い換え
25.1%こども家庭庁調査の最近結婚した既婚者配偶者との出会いのきっかけ最近の結婚者では、アプリが主要な出会い経路の一つだった
20.2%IPSS第17回の過去5年間に結婚した初婚同士の夫婦出会いのきっかけ(ネット:SNS・ウェブサイト・アプリ等)最近の初婚同士の夫婦では、ネット経由が2割だった(アプリ単独の率ではない)
22.6%/16.8%MMD調査で恋人探しをした20代/30代恋人探しの場・手段恋人探しをした層では、年代によりアプリを手段として挙げる割合が異なる
54.8%MMD調査で利用サービスを覚えている経験者2,940人アプリで出会った人と交際した経験その条件付きの経験者集団では、交際経験を報告した人が54.8%だった
23.8%/20.6%MMD調査の回答者全体身近な人の交際・結婚事例周囲にアプリ経由の交際・結婚例があると答えた割合

数字を比較する順番:①対象者、②調査時点、③分母、④複数回答か単一回答か、⑤現在・経験・関係結果のどれか、⑥ウェイトや抽出条件、の順に確認します。数値の大小だけで普及度やサービスの優劣を決めません。

DESCRIPTIVE DATA IS NOT A CAUSAL EFFECT

アプリが結婚を引き起こした、とまでは言えない

「アプリで出会って結婚した人が25.1%いた」という記述は、出会いの経路の分布を示します。しかし、アプリを使わなかった場合と比べて結婚しやすくなったか、アプリがなければ同じ人は結婚しなかったか、という反実仮想は測っていません。

利用する人には、年齢、地域、結婚意向、時間、友人関係、スマートフォン利用、サービス選択などの違いがあります。さらに、最近結婚した人に過去の出会いを尋ねる調査は、記憶や質問の選択肢にも依存します。これらを統制した比較や、利用機能を無作為に変える実験とは、推論できる範囲が違います。

オンラインサービスの数字の読み方については、アプリ統計の選択バイアスとアルゴリズムの記事で、登録・表示・選択・返信・マッチの段階を分けています。マッチ・返信・魅力・満足度の指標記事では、率の分母と時間単位をさらに整理しています。

年齢を単なる属性として数えるのではなく、表示ラベルや検索条件が候補者の集合と交際の進展にどう届くかは、日本の婚活プラットフォームにおける年齢表示・年齢フィルターの研究で別に整理しています。

言えること

特定の調査対象・時期・質問において、アプリが出会いの手段としてどの程度挙がったか。

まだ言えないこと

全利用者の結婚確率、使わない場合との差、アプリが結婚を生んだ因果効果。

別に測るべきこと

安全性、満足度、関係の質、継続、結婚後の生活は、出会いの経路とは別のアウトカム。

集計レベルの検証:「アプリが結婚を増やした」という因果物語の検証も出ています。JungとLusher(2026、Economics Letters)は、米国Current Population Surveyと「Tinder」の検索強度を露出の代理変数としたイベントスタディで、21〜35歳の結婚率への効果を推定し、全体の結婚率に有意な効果は見られなかったと報告しています。代理変数の精度、年齢層・国の限定は残る限界です。原典

PANEL DATA EVIDENCE

日本のパネルデータは、オンライン出会いと結婚後をどう結んだか

出会いの経路を「結婚まで」ではなく「結婚後まで」追った日本の研究があります。Potarcaと石田(東京大学社会科学研究所 Discussion Paper DP169)は、日本人のライフコースパネル調査(JLPS 2007〜2016年)から結婚済み夫婦2,941組を抽出し、オンラインで出会った夫婦とそれ以外で家事分担の平等さを比較しました。観測される特徴についてエントロピー・バランシングという統計手法で選択バイアスを調整したうえでの分析です。

結果の概要

オンラインで出会った婚姻は、他の出会い方の婚姻より家事分担が平等である割合が高い——ただし妻が大学卒の場合に限られました。著者らは、オンラインの出会いが選択肢の範囲を広げ、交際段階のジェンダー交渉を変える可能性を指摘します。

解釈の制約

バランシングは観測された特徴のみ調整します。オンライン出会いを選ぶ人々の観測されない違い(価値観、家族観、都市性など)が残るため、「アプリが平等な分担を作った」という因果主張はできません。

時代の限定

分析対象は2007〜2016年に結婚した夫婦であり、現在のアプリ市場(マッチングアプリの主流化、課金構造、審査体制)とは構成が異なります。異性愛婚姻に限定され、交際や利用者のウェルビーイングへの拡張もできません。

境界:これはDiscussion Paper(査読前の研究所ワーキングペーパー)です。自己申告の家事分担データに基づく観察研究であり、25.1%などの「出会い経路」統計とは測定している対象が違います。この数字から「アプリを使えば平等な結婚ができる」といった個別の処方は導けません。

SEXUAL HEALTH PATH ANALYSIS / 582 CHINESE APP USERS

「アプリ利用=リスク」ではない——リスクを運ぶのは行動

「アプリを使うと性感染症にかかりやすい」という言説がよく見られます。中国のデートアプリ利用者を対象にした横断研究は、この因果連鎖そのものを分解しました。性的経験のある異性愛利用者582人(TantanやMomoが中心)への調査で、カジュアルセックス動機→アプリ経由のパートナー数→危険行動→性感染症診断という経路を逐次媒介モデルで検討しています。

直接の関連はなかった

カジュアルセックス動機と性感染症診断の間に直接的な関連は見られませんでした。アプリ利用の動機そのものが病気の確率を上げるわけではありません。

リスクを運ぶのは行動

診断確率を有意に上げたのは危険な性行動(OR≈1.79)でした。動機もパートナー数も、危険行動を経由して初めて診断と結びつきました——「誰が出会ったか」ではなく「どんな行動を取ったか」が分水嶺です。

予防への含意

この構造は、アプリ利用者への一括的な非難よりも、危険行動自体への介入(検査・コンドーム・ワクチン情報)が合理的であることを示します。プラットフォーム非難は予防上の的を外します。

境界:横断調査であり因果の向きは不明、単一国の若年異性愛利用者への限定、自己申告の診断データです。日本の利用者への外挿や、個人への判定には使えません。PMC全文(オープンアクセス)

NATIONAL SURVEY TRENDS / 1987-2015 / JAPAN

「恋愛したくない」若者——国民調査が示す単身化と関心の実数

「若者は恋愛を諦めている」という言説には、全国代表データがあります。Ghaznaviら(2020、PLOS One)は、出生動向基本調査の7回分(1987〜2015年、各回11,683〜17,675人)を分析し、18〜39歳の交際状況と恋愛関心の時系列を推定しました。

単身化の実数

年齢標準化された単身割合は、1992年の女性27.4%・男性40.3%から2015年には女性40.7%・男性50.8%へ上昇。増加の主因は結婚の減少で、交際者の割合は大きく変わっていません。

「関心なし」は半数弱だが条件付き

2015年時点で独身者の約半数(全女性の21.4%・全男性の25.1%)が異性との恋愛に関心がないと報告。ただし質問は2010年・2015年のみ、「交際(こうさい)」の定義は調査に含まれず、同性関係は測定対象外です。

社会経済的な勾配

関心がないと答えた層は、所得・学歴が低く非正規雇用の割合が高い傾向がありました。「草食化=価値観の変化だけ」という説明では捉えきれない構造的要因を示唆します。逆に言えば、これは魅力や市場価値の問題ではなく、雇用と経済条件の問題としても読めるデータです。

境界:記述的な全国調査トレンドであり因果推論ではありません。異性間関係のみが対象です。「若者が恋愛できないのは市場価値が下がったから」という読みにも、「本人の自由な選択だけ」という読みにも、この研究は変換できません。測れているのは状態と申告された関心の分布です。PLOS One誌の論文(オープンアクセス)

独身のまま続けることとウェルビーイングの関係は、「独身でいることのウェルビーイング」の研究を読むページで扱います。年齢ラベルが候補集合をどう変えるかは、年齢表示・年齢フィルターの研究ページへ。

GENERATION 3 / TYPE 3 CONSOLIDATION / JAPAN

利用率・マッチング効率・婚姻移行を混ぜない

日本の研究を増やすときに起きやすい誤読は、特定の婚活プラットフォームで効率が上がったこと、条件を多く挙げた人の探索行動、結婚候補者の構成比を、一般的なアプリ利用率や個人の結婚確率へ変換することです。Generation 3では、三つの分母を同じ表に置いて境界を明示します。

日本のマッチング研究を利用率・効率・婚姻移行に分けた比較
研究の分母データと結果答えていない問い
構造化された結婚相談プラットフォームIBJの2014〜2025年ログを使ったOtani研究は、確認済みプロフィールと成婚記録からマッチング効率を推定し、効率が約4倍になったと報告一般的な恋活アプリの人口利用率、登録者一人の結婚確率、効率上昇の因果要因
全国パネルの配偶者条件と行動Hara・YuはJLPSの11年・8,946人年で、条件数が多い人ほど探索行動は多いが婚姻移行は遅いと分析条件数から本人の価値、アプリの優劣、誰でも再現できる成功率
条件を再構成した疑似市場鈴木・八代は25〜49歳の独身男女1万人について、希望率・人気率・成立率を作り、成立率3.8%、ミスマッチ率42.0%を示した実際の接触・交際行動、アプリの利用率、個人に返せる「市場価値」点

Otaniの分析は、選抜の強い結婚相談サービスのプラットフォーム効率です。Hara・Yuのパネルは、条件と探索・婚姻移行の時間的な関連を見ます。鈴木・八代の研究は、調査回答を仮想的な市場に置いた指標です。三つとも、日本の「利用率」や個人の将来確率を直接測った研究ではありません。

内部リンク:年齢条件が候補集合を狭める仕組みは年齢表示・年齢フィルター、個人点数化の問題はSMV研究、観測されたマッチを全人口へ外挿できない理由はデータ・バイアス研究で分けて確認します。

SEARCH QUESTIONS, ANSWERED CAREFULLY

よくある問いへの短い答え

日本のマッチングアプリデータから答えられる問い
問いこのデータから言える答え
日本の利用率は何%?「現在利用」「利用経験」「恋人探しで使った」「最近の結婚の出会い経路」「IPSSのネット経由」が別なので、対象と質問を指定しない単一の率はありません。→該当セクション
マッチングアプリ婚は4人に1人?こども家庭庁調査の、主に30代以下・直近5年以内に結婚した既婚者の出会いのきっかけでは25.1%。全人口やアプリ利用者の4人に1人という意味ではありません。→該当セクション
マッチングアプリの結婚率は20.2%?IPSS第17回の20.2%は、過去5年間に結婚した初婚同士の夫婦が「ネット(SNS・ウェブサイト・アプリ等)」を出会いのきっかけに挙げた割合です。アプリ利用者の結婚確率でも、アプリ単独の率でもありません。→該当セクション
アプリ利用者の何%が結婚する?今回の公的調査とMMDの数値は、その分母・追跡期間・非利用者比較を満たす結婚確率ではありません。→該当セクション
20代と30代でどちらが多い?MMDの恋人探しの手段では20代22.6%、30代16.8%ですが、対象者と質問が限定されます。年齢だけで一般的な魅力や将来の結果を予測する数字ではありません。→該当セクション
年代別の出会いでアプリは何割?明治安田総合研究所の全回答者8,872人では、複数回答の出会いのきっかけとして25〜29歳33.3%、30〜34歳30.9%がアプリを挙げました。利用率や交際・結婚の確率ではありません。→該当セクション
アプリで会う・交際・結婚はどれくらい?JODAの直近1年利用者500人では81.4%が1人以上と会った経験を報告し、会った407人のうち27.8%が交際、13.0%が結婚を報告しました。利用者全体の成功率ではありません。→該当セクション
マッチング効率が上がれば誰でも結婚しやすい?IBJの選抜された結婚相談プラットフォームでは効率上昇が推定されていますが、一般アプリの利用率や個人の結婚確率ではありません。→分母の比較

LIMITS AND NEXT QUESTIONS

このページの数字から言えないこと

  • 現在の日本人全体が、何%使っているかという単一の全国推計。
  • アプリを使った人と使わなかった人の、結婚・交際・満足度の因果差。
  • アプリごとの優劣や、個人が使えば交際・結婚できる確率。
  • 「出会いのきっかけ」の構成比から、関係の質、安全性、継続期間を推定すること。
  • 日本の調査結果を、年齢、性別、性的指向、地域、結婚意向の異なる全ての人へそのまま一般化すること。
  • 明治安田総合研究所の複数回答を、現在のアプリ利用率やアプリ経由の交際・結婚率へ変換すること。
  • JODAの直近利用者内の対面・交際・結婚経験を、全利用者の成功確率やアプリの因果効果へ変換すること。

「何人に1人」という見出しを見たら、まず誰を数えた数字かを戻って確認します。数字を小さく見せたり大きく見せたりするためではなく、調査が実際に答えた問いを守るためです。

PRIMARY AND OFFICIAL SOURCES

原典と関連ページ

  1. こども家庭庁(2025), 令和6年度「若者のライフデザインや出会いに関する意識調査」ウェブアンケート調査 最終報告サマリ15〜39歳、未婚18,000人・既婚2,000人、2024年7月の全国Web調査。最近の結婚者の出会いのきっかけと、利用経験を分けて確認する。
  2. こども家庭庁(2024), ウェブアンケート調査結果(速報)25.1%の出会いのきっかけと、既婚者・未婚者のアプリ利用経験を、別設問として示す速報資料。
  3. こども家庭庁, 現在の交際相手の有無・交際相手と知り合ったきっかけ(経年変化)現在の交際相手の有無と、ネットを含む出会いのきっかけの経年変化を紹介する公式データポータル。今回の25.1%と同じ分母ではない。
  4. MMD研究所(2025), 2025年マッチングサービス・アプリの利用実態調査スマートフォン所有者20〜69歳30,000人、人口構成比へのウエイトバック。恋人探しの手段、利用者の交際経験、周囲の事例を別々に報告。
  5. 明治安田総合研究所(2026), 恋愛・結婚に関するアンケート調査 / 公式報告書全国18〜54歳8,872人、2025年12月実施。恋人・結婚相手となる可能性がある人との出会いのきっかけを複数回答で調べ、25〜29歳33.3%、30〜34歳30.9%がマッチングアプリを挙げた。利用率や交際結果ではない。
  6. 一般社団法人日本マッチングアプリ機構(2026), マッチングアプリ利用実態調査直近1年に利用した18〜49歳500人。407人(81.4%)が1人以上と会い、対面経験者内の複数回答で交際27.8%、結婚13.0%。Freeasyによる自己申告調査で、全利用者の成功率ではない。
  7. 国立社会保障・人口問題研究所(2026)『第17回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)』結果の概要 / 公式概要PDF / 掲載グラフデータ(図表5-2・5-3) / 報道発表資料2025年6月実施、全国1,000調査区。独身者6,756票、夫婦5,024票。図表5-3は過去5年間に結婚した初婚どうし(妻は結婚時50歳未満かつ調査時55歳未満、客体数570)の出会いのきっかけ、図表5-2は婚姻年次2020〜2024年の別集計。ネット20.2%はSNS・ウェブサイト・アプリ等を含む経路構成で、アプリ単独の利用率や成婚率ではない|研究台帳ID: JPAPP-008。
  8. Chiba, Maezono & Nakata(2025), Dating and Marriage during the COVID-19 Pandemic: Evidence from Japan, CARF-F-60925〜45歳10,000人の回顧調査から、独身・交際・結婚の遷移を構成したWorking Paper。アプリ利用率やアプリの因果効果を測る研究ではない。
  9. Potarca & 石田(2023年10月、東京大学社会科学研究所 Discussion Paper No.169), “Is Online Mate Selection Linked to More Egalitarian Marriages in Japan?”日本人のライフコースパネル調査(JLPS 2007〜2016)の結婚済み夫婦2,941組を、エントロピー・バランシングで選択を調整したうえで分析。オンライン出会いの婚姻は家事分担がより平等——ただし妻が大学卒の場合に限る。査読前ディスカッションペーパーであり因果主張は不可。
  10. 国立社会保障・人口問題研究所(2023)『第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)』報告書政府確率調査。独身者調査7,826票(18〜54歳未婚、回収率55.9%)・夫婦調査6,834票(72.7%)。18〜34歳で「いずれ結婚するつもり」は男性81.4%・女性84.3%(ともに前回比低下)、最近の結婚の13.6%がネットサービス経由。
  11. アプリ統計は恋愛市場の平均ではない登録・表示・選択・返信・マッチの条件付きデータと、観察研究・フィールド実験の推論範囲。
  12. マッチ・返信・魅力・満足度は別の数字オンライン行動、対面の初期魅力、関係結果を一つの率にしないための指標ガイド。
  13. マッチングアプリ疲れは研究でどう測る?利用の有無や出会いの経路と、疲労・バーンアウト・心理的健康のアウトカムを分けて読む。
  14. “Dating App Use and Sexual Risk: Understanding the Associations between Casual Sex Motivation, Number of Sexual Partners, and STI Diagnoses” (2023)PMCオープンアクセス。中国の異性愛利用者582人。カジュアル動機とSTI診断の直接関連なし。診断確率を上げたのは危険行動(OR≈1.79)であり、動機・パートナー数は危険行動を介して初めて結びつく。
  15. Ghaznavi, Sakamoto, Nomura, Kubota, Yoneoka, Shibuya et al. (2020), “The herbivore’s dilemma: Trends in and factors associated with heterosexual relationship status and interest in romantic relationships among young adults in Japan — Analysis of national surveys, 1987–2015”PLOS One(オープンアクセス)。18〜39歳、出生動向基本調査7回分。単身割合1992年の27.4%(女)/40.3%(男)から2015年の40.7%/50.8%へ上昇。独身者の約半数が恋愛に関心なしと報告——低所得/非正規雇用との関連があり。
  16. Jung and Lusher (2026), Dating apps and marriage ratesEconomics Letters。米国CPSとTinder検索強度のイベントスタディ。結婚率への有意な効果なし。
  17. Otani (2025), “Nonparametric Estimation of Matching Efficiency and Elasticity in a Marriage Agency Platform: 2014–2025”Economics Letters掲載の研究。IBJの確認済みプロフィール・成婚記録を使った非パラメトリック分析で、マッチング効率の上昇を推定。選抜された結婚相談サービスのデータであり、一般的なアプリの利用率や個人の結婚確率ではない。DOI: 10.1016/j.econlet.2025.112617
  18. Hara & Yu (2025), “Mate preferences and marriage-related behaviors: The case of Japan”Journal of Marriage and Family 87(4):1361–1386。JLPSの11年データ、3,195人の未婚回答者による8,946人年。配偶者条件、探索活動、翌年の初婚移行を分析し、条件数の多さが探索を増やす一方で移行を遅らせる関連を報告。DOI: 10.1111/jomf.13088
  19. 鈴木亘・八代尚宏(2025)「現実的な配偶者の決定要因〜結婚候補者の存在確率に関する定量的評価〜」内閣府経済社会総合研究所『経済分析』。25〜49歳の独身男女10,000人、年齢・年収・雇用・学歴・身長・体型の6条件から希望率・人気率・成立率を構成。成立率3.8%、ミスマッチ率42.0%は、調査回答を疑似市場へ置いた指標であり、個人の価値点やアプリ利用率ではない。DOI: 10.60294/keizaibunseki.211_03

原典・調査方法の確認日:|この記事はアプリ利用者や非利用者の人間的価値を採点しません。

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